アリーキャット
(C)2017「アリーキャット」製作委員会
元・ボクシングの東洋チャピンオンで、いまは頭の後遺症に悩みながらも警備員の仕事をしている朝秀晃。ささやかな楽しみは、彼が「マル」と呼ぶ野良猫の世話をすることだった。ところが、そのマルが行方不明に。保護されているかもと、保健所を訪れた秀晃は、入口にひとりの男が猫を抱いて出てくるところに出くわす。その猫こそ、マルだった。
「マル! よかったな! 命拾いしたな、お前!」
ところが、その男、梅津郁巳は無視して歩き出す。
「ちょっと、待って。そいつ、俺の猫なんだよ。ずっと探してて。な、マル!」
「リリィだよ」
「え?」
「リリィ。俺がさっきつけた名前。いま、もらってきたところ。猫って魂を9つ持ってるんだって。こいつの魂はもうリリィなんだよ」
ふたりの男はそんなふうに出逢った。