晴小袖
(C)KADOKAWA 1961
深川の材木問屋角万と角政は宮内省納入の建築用材の入札に、同業者の不正手段を排し、安価で落札出入の川並の親方和泉屋喜兵衛に木材買入れの仕事を依頼した。喜兵衛も仲間からの手荒い妨害を覚悟してこれを引受けた。喜兵衛が御用材伐り出しの小頭を命じたのは木曽育ちの新参川並、三次郎だった。流れ者の老川並、宇之吉は彼の実父だが、おのれの前科をはじて親子の名乗りはしないが、陰に陽に三次郎をかばっていた。喜兵衛の妹おのぶは、事ごとに三次郎といがみ合う勝気な娘だったが、心では彼に惚れていた。おのぶを恋する組の兄貴株弥太郎は、それを知って三次郎に厭がらせばかりしかけていた。