お役者鮫
(C)KADOKAWA 1959
河原崎座の舞台は初日を明日に控えていた。狂言作者竹柴瓶作、座頭の市川仙翁、鳴海屋の一統扇十郎、扇之助らが顔を揃えて舞台稽古に余念がない。仙翁は、扇之助のセリフ回しが気に入らず、弟扇四郎に代役を命じた。扇之助は席を蹴った。瓶作は芸者鶴代に執心だった。だが、鶴代は扇之助と将来を言い交わした仲なのだ。鶴代は扇之助からの呼出し状を受取った。第六天神裏、扇之助から芸者をやめて一緒になってくれと言われた。扇之助が彼女を引き寄せようとした時、鶴代の下駄の鼻緒が切れた。代りの履物をと扇之助は消えた。が、戻った時には鶴代の姿はなかった。