恋の罠

名文家として知られる官吏キム・ユンソは、名画の複写すり替え事件の捜査で初老の書写家と出会う。その男は、淫らな小説を書き写しているのだった。「戯作者の真髄は、夢の中でしか味わえないものを描くことだ」と言う。そんな事があって、ユンソは言い知れぬ興奮に囚われてしまうのだった。ある日、ユンソは王の寵愛を一身に受ける美貌の妃チョンビンから好意を寄せられ、妃のことを思いながら淫らな筆を走らせる。その小説「黒谷秘事」は、女性読者を中心に絶大な人気を獲得した。挿絵を画家グァンホンに頼み、官能の世界が描かれていく。チョンビンとの禁断の情事によって“官能の真髄”を追求し、チョンビンもまた高貴なる妃から恋する一女性へ変貌を遂げてゆく。ユンソが仕掛けた恋の罠は真実の愛なのか、小説のための欲望なのだろうか。