この首一万石
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人入れ稼業の井筒屋で働く日雇い人足の権三は明るい美貌と美声で女性をときめかす人気者。だが身持ちの良い権三は浪人者・凡河内典膳の娘・千鶴以外には見向きもしない。千鶴も権三を思っていたが、問題は典膳。武士の誇りにかけて人足風情に千鶴をやるわけにはいかないと、結婚を許さなかった。そのため権三は武士になりたいと願うようになる。その頃、井筒屋に小此木藩の家臣がやってきた。藩の若君誕生を祝って御胞衣道中をするのに際し、節約のために日雇い人夫を使いたいという。江戸から九州まで三百里以上。権三は仲間の助十らと槍持ちとして旅に出た。東海道を進む権三は、千鶴への愛を誓って女遊びの誘いも断り、家中の山添志津馬を感心させた。だが三島宿の前で生爪をはがした権三は道中から遅れることに。運悪く、三島で江戸へ下る渡会藩の大名行列と御胞衣道中が重なってしまった。先に着いた小此木藩に渡会藩が本陣を譲るよう頼んだのに対し、小此木藩の家中は憤然として断り、小藩とはいえこちらには家康公の命を救った名槍・阿茶羅丸を抱えているのだと嘘を吐いて、渡会藩を脅したのだった。だが金を積まれて結局小此木藩はあっさり譲ってしまう。一方、権三は遅れて三島に到着した際、千鶴そっくりの女郎ちづると出会い、我慢できずに槍を本陣に置いたまま、女郎屋にむかってしまう。そのために、小此木藩の嘘がばれてしまうのだった…。